荒井明夫ブログ

2023年度の講義が終わりました。学生さんたちの評価です。
   2023年度の講義が終わりました。学生さんたちの私の講義に対する評価を頂きました。紹介します。
 学部長職にあるため、同僚の教育学科の先生方の御配慮により今年度後期科目は「演習(ゼミ)」と「教育史2」「基礎演習2B」でした。ここでは講義科目「教育史2」の受講学生の感想を紹介します。学生諸君からもらった評価です。
 私が担当する前期(4月~7月)「教育史1」では江戸時代から1945年敗戦までの日本の学校・教育と社会の変遷を辿ります。「教育史2」では、敗戦から戦後教育改革、日本国憲法・1947年教育基本法成立の歴史的・教育史的意義を、成立過程にまで立ち入って詳細に講義しました。
 今年度の講義に対する私の課題意識は、ある意味「危機の時代」にある中で歴史の中から教訓・未来の展望を引き出したいという思いで講義に臨み、内容を組み立てました。
 以下年度末の、恒例となった「学生諸君による講義の評価」を紹介します。
 教育学科4年・Kさん。「1年間を通して先生の教育史を受講させて頂きました。学ぶことが多く、大学に入って初めてこんなに真剣に講義に集中することができました。本当に学ぶことが楽しい、もっと聴きたいと思い、大学4年間の講義の最後が荒井先生の講義で良かったと本当に思えました。今の日本国憲法・教育について知ることができ、これから生きていく自分自身、そしていつか生まれるであろう自分の子どもについても大切なことで、日本の未来について考えさせられる内容だったと断言できます。今までの日本の歴史についてよく理解をしていて、それを踏まえた上で日本のこれからを考えられるような荒井先生のような人に日本をまかせたい、私たち国民の代表になってほしい、と思いました。この講義で私は日本の教育史について学びながら、日本のこれからの未来のことを考えることができました。私の学生人生最後で荒井先生の講義を受講できて本当に良かったです。1年間本当にありがとうございました。」
 ☞(荒井からひとこと)私が政治家に転身するには年を取りすぎています。立派な政治家を選出し、厳しく政治をチェックできる国民の教養が必要です。
 教育学科4年・Tさん。「教員採用試験の時には暗記だけになってしまった教育基本法や憲法の文言が内容としてはっきりみえた。日本国憲法第26条の教育を受ける権利が基本的人権の中で位置付けられたということが、日本の教育の形を大きく変えてくれたと考える。なぜかというとかつての臣民としての国民と天皇の関係性が転換され、権利として保障されていなかったらとても怖い。子どもにとって、この第26条は、現代と将来の二重の意味で保障されるべきである性格をもつと聞き、来年度から教員になる身として責任をもって取り組まないといけないと強く自覚できた。教育史1からの毎回の授業で貴重なお話しをありがとうございました。いつもこの授業を楽しみにしていました。終わってしまうのがとても寂しいです。本当にありがとうございました。」
 政治学科4年・Iさん。「私は政治学科に在籍しているのでここまでじっくり教育の歴史にフォーカスした授業を殆ど受けてきませんでした。しかし1年を終えて思うのは、『この講義に関しては教育学科の学生のみならず教師を希望する学生全員に是非受けてもらいたい』ということです。教育のもつ力、国は、教師はどうあるべきなのか、教育に関する様々なものを学べ、自分はどうありたいかを考えるきっかけとなりました。1年間ありがとうございました。」
 厳しい批判があってもよいし、それは次年度のためほしい、と私が要望しても大凡は上のとおり極めて厚意的な感想でした。今年度もなんとか合格点はもらえたと思っています。
2024年の年頭に思う

新しい年を迎えました。HPでお世話になっている皆様にとって、今年がよい年となることを祈念しております。

本来「新年おめでとう」と書きたいところですが、新年の幕開け早々から大震災と大事故に見舞われました。被災された方々には心からお見舞い申し上げます。 世界を見渡す時、残念ながら紛争という名の戦争が絶えません。一昨年のロシアによるウクライナに対する、昨年はイスラエルによるガザ地区に対する、それぞれの大規模な軍事攻撃が起こってしまいました。私たちの無力を嘲笑うかのような攻撃が続き、幼い生命が連日奪われてしまった時、私たちは何をすべきかを考えさせられます。
私は、今こそ私たち自身の「足元の力」を育てるべきであると思います。「足元の力」とは、私たちの微力な民主主義を育てることです。日本は一見すると民主主義国家であるかのように思えます。しかしそれは間違いです。この国の民主主義は脆弱です。各種選挙での投票率しかり。安倍政権時代の「モリ・カケ」問題しかり。派閥によるパーティー券による裏金作りしかり。
では民主主義を育てるために何が必要か。教育がとても大切です。競争のための教育ではなく、子どもたちを、それぞれのもつ個性を大切に育てていく主体性を育てる教育です。そこでは「自分の言葉」を大切にすることだと考えます。
言葉を育てることを通じて人・子ともたちを育てること、このことが今大切になっていると思っています。
故加藤周一氏は、1968年のソビエト軍のチェコ・ハンガリー・ポーランド等への侵略に対し「1968年の夏、小雨に濡れたプラハの街頭に相対していたのは、圧倒的で無力な戦車と、無力で圧倒的な言葉であった」と述べています。戦車を無力化する圧倒的な言葉を我々はもつ必要があります。
そのためにも、私自身も微力ながら教育に尽力したいと決意する年頭です。本年もどうぞよろしくお願い致します。