荒井明夫ブログ

安倍政権による改憲の現段階を危惧する

「戦後レジームからの脱却」を公言し、閣議決定により集団的自衛権の行使を認めるなど議会軽視(というよりは無視)も甚だしい安倍政権。「戦後レジームからの脱却」とは「日本国憲法体制の否定」であることが明らかになりつつある今日、「日本国憲法」体制の「空洞化」はどの程度進んだか、歴史的事実に照らして検証してみたい。「日本国憲法体制の空洞化」という既成事実の積み上げにより「空洞化」の今日をみる。

「戦争のできる・普通の国」づくりが安倍政権の目標であることは間違いない。だから、憲法九条が邪魔なのだ。戦争国家体制に向けてまず必要なことは、第一に、軍事情報の漏洩阻止である。戦時下の日本には、「軍機保護法」(1937年施行)「国防保安法」(1941年)があった。現在これに該当するものが「特定秘密保護法」(2014年施行)である。第二に、資源・労力の動員を可能とすること。これについては国家総動員法が該当するが、現在日本においてはこれに該当するものは未だ無い。但し、その一部は、自衛隊の「防衛出動時における物資の収用等に係る規定の整備」について「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律」(2003年施行)で可能となっている。第三に、治安維持法である。これは、悪名高い「共謀罪」で対応できるようになった。第四に、メディアの統制による「報道の自由」についても「共謀罪」で対応可能である。

 あらためて「共謀罪」が現代版治安維持法であることを深く把握する必要がある。
 こうした状況下にあって、あらためて改憲発議が時間の問題となるであろうことは想像に難く無い。改憲発議を許してはならないと強くおもうのである。
SNSと「いいね」を考える

SNSの登場は、世界・社会の様相を一変させた。巨大な動きを創り出す程に力をもつSNS。だが、それを操作する人間には大きな「落とし穴」があるように思えてならない。その「落とし穴」を考える。

2004年に設立された「フェイスブック」、2007年から始まった「ツイッター」(エヴァン・ウィリアムズとクリストファー・アイザック・ストーンが2007年4月に設立した「ツイッター社」を起点と考えて)。同じ頃、アップル社がiPhoneを発表する。

これらの世界的普及が社会を大きく変えた代表例として、チュニジアの露天商の青年が独裁政権に抗議して焼身自殺したことを契機に民主化を求める世論が一気に広がり、独裁政権を打倒した「ジャスミン革命」がある。この運動は国境を超えた。「アラブの春」をもたらしたのである。

限られた字数の中で、情報は瞬時に拡散し、それを見た他人がまた「いいね」と反応し、情報が拡散していく。劇場型の政治がそこに介入した時、「情報」が単純化して伝達されることをわれわれはみてきた。例えば「郵政民営化イエスかノーか」「前進にイエスかノーか」等々。

危惧するのは、われわれの判断力がそこに追いついているかどうかだ。じっくり考え、多様な選択肢がありえるにも関わらず「イエスかノーか」として単純化されることで、われわれの思考回路も単純化することをなによりも恐れるのだ。

じっくり考えて、物事の背後にある真実により謙虚になって眼を向けたいと考える日々である。

高畑勲さんの御逝去を悼む

日本のアニメ映画監督の巨匠、高畑勲さんが亡くなられました。ささやかな思い出を振り返りたいと思います。

 

 

いまから十数年前、埼玉県にある保育園の運動会で御一緒したのが最初です。その保育園は、保育実践で有名で、私の子どもたちもお世話になりました。私が学生を引率して見学に訪問した際、偶然高畑さんもこられていました。

気さくに話しかけられ直ぐに意気投合し、日本の子どものこと、文化のこと、等々を熱く語り合いました。最後は、運動会参加者全員での「パン食い競争」で御一緒し、走ったことが忘れられません。

そして、2013年に、大東文化大学の教育学科に保育士課程が開設した時、その開設記念イベントの記念講演を高畑さんに依頼しました。一度はお引き受けいただいたのですが、「『かぐや姫の物語』の制作が遅れ、監督が講演に出かけているとスタッフの士気に関わるから」と断られてしまいました。残念でした。

ところで、御存じのように高畑さんの代表作に、「火垂るの墓」があります。巨匠の名作の原点は、御自身の戦争体験にありました。御自身の戦争体験を振り返っての、熱い平和へのメッセージが残されています。

 

 

その最後の一節

「アジア太平洋戦争の開戦や敗戦へのいきさつから、延々たる対米従属、そして、悲惨な原発災害に至るまで、責任を決して明らかにせず、追及せず、ただ、ずるずると押し流されていく、私たちのずるずる体質と空気をすぐ読む驚くべき同調気質とは残念ながらいまも七〇余年前もちっとも変わっていないのではないでしょうか。私は自分も含めこの体質が本当に怖いのです。だから憲法九条は最後の歯止めとして絶対に変えてはならないと思います。」

高畑さんのメッセージを重く受け止めたいと思います。

『研究成果報告書』を刊行しました。

本HPの、「研究活動」欄でも記しましたが、『研究成果報告書』を刊行しました。2014(平成26)年度から2017(平成29)年度まで受けてきた日本学術振興会・科学研究費・基盤研究B「近代学校の組織化に関する地域史研究─就学行政の『勧奨』と『督』の構造化─」の研究成果です。

本共同研究は、私を研究代表者とする合計9名の研究者の共同研究です。1880年代前半の、各道府県が発した「就学督責規則」を収集し、整理・分析したものです。

なによりも成果なのは、全47道府県の就学督責規則を収集・整理した点にあります(福島県・沖縄県は未発見)。さらにいえば、「督責」の方法・地域における就学政策の展開・近世社会との連続性・罰則規程や「強迫」との連続性などを解明したことが上げられます。

今後の課題は、前の時代である1870年代との連続性と非連続性、あとの時代である1880年代後半~1890年代の各道府県が発した「就学規則」の収集・整理・分析です。これらの作業によって、義務教育制度が成立していく過程での地域からの公教育創造の動きがみえてくるものと思っています。

2017年4月から2018年3月までの研究活動

2017年4月から2018年3月までの研究活動です。

①2017年度大東文化大学・教員免許更新時講習・必修科目講義(8月21日・22日)。※今年は「道徳の教科化」を中心テーマに講義しました。

②2017年度教育史学会第61回大会(於岡山大学、10月8日)・コロキウム『就学の政策転換─「勧奨」から「督励」へ」のオルガナイザーを努める。

③就学督責研究会第8回例会(於・大東文化大学、7月29日~30日)第9回例会(於・大東文化大学、8月28日~29日)開催。

④日本学術振興会平成30年度科学研究費・基盤研究(B)研究計画調書の作成。

<執筆論文>

①「国民の教養と中等教育の役割」『大東文化大学教育学研究紀要』第8号所収。

②(研究ノート)「専門学校成立史序説」『大東文化大学史研究紀要』第2号所収。

③「本共同研究の課題と方法および研究成果」『2014(平成26)年度~2017(平成29)年度科学研究費補助金・基盤研究B・研究成果報告書・近代学校の組織化に関する地域史研究─就学行政の『勧奨』と『督責』の構造化─』所収(本HPのブログ参照)。

1月を終えて今年の豊富を語る

1月を終えますが、2018年の私の豊富です。

1.昨年の研究成果は「研究活動」で書きますが、1本の論文と一本の研究ノートでした。共同研究の成果を秋の教育史学会でコロキウムとしてまとめることができたのも成果だと思います。

2.今年は、1)長年継続してきたゼミの活動をまとめた本を世に問いたいと思っています。「きけわだつみのこえ」を2003年以降2013年度までの約10年間ゼミで読んで研究してきました。その成果をまとめたいと思っています。2)山口高等中学校の研究を完成させたいと考えます。これに関係する最低2本の論文をまとめたいと思っています。3)昨年秋、これまでの継続の性格をもった「就学規則」研究について、学術振興会に科学研究費を申請しました。その研究を進展させたいと思っています。

3.4月に出会う学生諸君との出会いの場である授業・講義を大切にして少しでも高度の内容で満足してもらえるように頑張りたいと考えます。

4.昨年秋の学科主任選挙で再選されました。4月から二期目がスタートします。引き続き主任の業務を誠実に務めていきたいと考えます。

5.精神的ストレスが溜まる状態が続くと思います。好きな音楽や読書(文学作品)を通じて、精神的には落ち着いた日々を過ごしたいと考えます。聴いた音楽について、読んだ文学作品について、これまで同様このHPのブログで紹介していきます。それを通じて少しでもブログの更新頻度を高めたいと思っています。

いうまでもありませんが、そのためには健康と家族で過ごす時間を大切にしていきたいと考えています。今年もまたどうぞよろしくお願いします。

教員プロフィール・主要研究論文一覧

1955年東京生。東京大学大学院教育学研究科・博士課程修了。博士。専攻は、近代日本中等教育史。著書『明治国家と地域教育』、編著『就学告諭と近代教育の形成』(東大出版会)『近代日本黎明期における「就学告諭」の研究』(東信堂)など。明治初期・地域の学校設立についての研究や中学校設立の研究などがテーマです。教育史学会理事を2003年から、2016年10月から中等教育史研究会代表を努めています。大東文化大学内では教職課程委員長などを歴任。現在教育学科主任・歴史資料館運営委員を務めています。

●趣味はクラシック音楽を聞くこと。特にベートーヴェンやバッハ、指揮者のフルトヴェングラー・ムラビンスキー・クレンペラーのファンで協会や研究会の会員になっています。その他にジャズや映画・演劇・歌舞伎鑑賞。自動二輪大型免許をもち、アマチュア無線は現在4級で近く3級にチャレンジします。小型船舶2級免許をもちボートで海に出るのも趣味です。最近は中南米音楽のフォルクローレ、特にケーナの演奏に凝っています。

●家族構成は、妻と一男三女、孫五人です。

<著書>

『明治国家と地域教育』2011年1月1日、吉川弘文館。

<編著>

  • 荒井明夫・川村肇編『就学告諭と近代教育の形成─勧奨の論理と学校創設』2016年2月、東京大学出版会
  • 荒井明夫編『近代日本黎明期における「就学告諭」の研究』 2008年2月29日、東信堂。
  • 堀尾輝久編『講座 学校2 日本の教育の50年』(柏書房)など。

 

<学術論文>

  1. 「鹿児島県管理尋常中学造士館の地域性に関する一考察」』中等教育史研究』第23号、2016年。
  2. 「鹿児島県における近代的中等教育機関の成立と展開-地域性に着目して-」『大東文化大学紀要』 第54号、2016年3月。
  3. 「就学告諭における『強迫性』の考察-就学『義務』論生成序説」(荒井明夫・川村肇『就学告諭と近  代教育の形成』 2016年2月、東大出版会、所収)、133-161頁。
  4. 「書評・池田雅則『私塾の近代-越後・長善館と民の近代教育の原風景」『日本の教育史学』第58集   2015年。
  5. 「書評・塩原佳典『名望家と<開化>の時代-地域秩序の再編と学校教育』を読んで」『日本教育史研  究』第34号、2015年。
  6. 「徴兵令認定中学校の性格に関する試論」『中等教育史研究』第22号、2015年。
  7. 「山形県における尋常中学校の成立」神辺靖光編『明治期尋常中学校成立史-東日本編』第五章、梓出  版社、2014年刊行。
  8. 「一八八〇年代教育史研究会のこれまでの研究成果と今後の研究課題について」『『一八八〇年代教   育史研究年報』第5号、2013年。
  9. 「文部省管理山口高等中学校・鹿児島高等中学造士館主要史料の解題」『『一八八〇年代教育史研究年  報』第5号、2013年。
  10. 「就学督責研究ノート(一)」『『一八八〇年代教育史研究年報』第4号、2012年。
  11. 「近代日本におけるアーティキュレーション形成史序説-一八七〇年代を中心に-」『一八八〇年代教  育史研究年報』第二号、2010年10月。
  12. 「一八八〇年代教育史研究の課題」『一八八〇年代教育史研究年報』第一号、2009年10月。
  13. 「近代日本公教育成立過程における国家と地域の公共性に関する一考察」(日本教育学会『教育学研   究』第72巻第4号、2005年)
  14. 「第一部解題」(中野実『近代日本大学制度の成立』吉川弘文館、2003年)
  15. 「『諸学校通則』第一条適用尋常中学校の性格に関する一試論-福岡県豊津尋常中学校の学校基本金に着目して-」(中等教育史研究会『中等教育史研究』第10号・2002年)
  16. 「山口高等中学校の性格と歴史的役割」(全国地方教育史学会『地方教育史研究』第23号、2002年)
  17. 「1891(明治24)年『中学校令中改正』後における府県管理中学校の性格に関する一考察-山形県庄内  尋常中学校を事例として-」(全国地方教育史学会『地方教育史研究』第21号・2000年5月)
  18. 「1891(明治24)年『中学校令中改正』後における府県管理中学校の性格に関する一考察-山形県米沢  尋常中学校を事例として-」(中等教育史研究会『中等教育史研究』第7号・1999年 4月)
  19. 「戦後教育改革における中等教育の性格に関する試論-新制中学校の設立過程分析を手がかりに
    -」(河内徳子編『21世紀の民俗と国家第7巻・多文化社会と教育改革』第8章として収録、1998年1月、未来社)
  20. 「戦後教育改革期における民衆と学校」(堀尾輝久他編『講座学校2 日本の学校の50年』の第1章として収録、1996年4月、柏書房)
  21. 「『森文政期』における中学校の設立維持基盤に関する研究-広島県尋常中学福山誠之館と福山教育義  会を中心に-(『大東文化大学紀要』第34号、1996年4月)
  22. 「1891年『中学校令改正』と広島県会(その2)-広島・福山両中学校地方税支弁をめぐる広島県会の  論議-」(中等教育史研究会『中等教育史研究』第4号、1996年4月刊行)
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