教育問題・大学論

大学の現状とそれを憂いている人への好著2冊
大学の現場は病んでいる。意味不明の仕事が多く、貧困な予算の下で補助金を獲得するためのあらゆる競争に巻き込まれ、行政から次から次へと来る「改革」という名の圧力にさらされている。1991年に大学設置基準は「大綱化」されたはずであるが、それ以降の30年は「改革」のために走り続けさせられてきた。大学の現場は、教育よりも様々な申請書類を書かされる場と化し、研究に費やす時間がなかなかとれないという現状である。そんな中で、政府が主張する「世界の大学ランキング゙上位に日本の大学を」などというスローガンはただ虚しい限りである。
そうした大学の現状に対し、心ある大学人たちは本当に危機感を抱いて憂いていることと思う。こんな教育と学問研究の現状では、一体日本の将来はどうなってしまううのかと。
そうしたときに出た、本当に名著がある。
友人で京都大学の教授である駒込武さんが編著者になって各国立大学・公立大学の現状を告発した本である。今どうなっているのか恐るべき実態が描かれている。問題は国公立大学だけではなく、私立大学にも関係してくるはずである。いまから備えておきたい。
2019年に出た佐藤郁哉先生の『大学改革の迷走』は、そんな大学の現場で疲れ果てている大学人が読むべき好著である。毎年の風物詩である「次年度シラバス執筆」、PDCAサイクルの現実、大学現場の面従腹背と過剰同調、大学政策の「無責任の体系」等々。読んでいて「溜飲の下がる」思いである。478ページの大著であるが、読み始めると止まらない。
大学「改革」現場の中で奔走さ(せら)れている人に是非一読を進めたい。その原因がどこにあるか、しっかりと理解できる好著である。