荒井明夫ブログ

2021年度前期ゼミを終えました。

2021年度前期もようやく終わろうとしています。

学部長職就任のため、学科の特別の計らいで担当授業を少なくしていただきました。ゼミは既に月曜日に終了し、「教育史」講義も昨日終えました。前期の授業は全て終えたことになります。コロナ禍のため、対面型であったりオンラインに移行したりとコロナに翻弄されましたが、学生諸君は良くついてきてくれたと思っています。

今年度の前期ゼミでは、社会を震撼させた3つの衝撃的な事件のルポルタージュを取り上げ、全員で読み検討しました。2008年に発生した「秋葉原事件」、2015年に川崎市で発生した「中学一年生男子殺害事件」、2016年に発生した「障がい者施設での殺傷事件(相模原事件)」の3件を採り上げたルポルタージュです(写真)。
この事件のルポルタージュを読みながら、その事件の深奥にある社会的側面に立ち入って、事件の社会的背景を探ることを意図しました。
「秋葉原事件」では、成績優秀ながらも親の虐待の中で成長した過程・不安定雇傭の実態の中でストレスを蓄積した過程に注目し、「中学一年生男子殺害事件」では、地域環境と子育ての関係や激しい暴力の中でも友達を求め続けた被害者の心情、「障がい者施設での殺傷事件(相模原事件)」では社会に存在する優生思想と事件を引き起こした植松死刑囚が大学で教育学を学んだ点に着目し「大学・教育機関での学びの意味」について討論してきました。
各班による問題提起とそれに基づく討論は徐々に深まりをみせ、社会的背景に迫る討論ができたと思います。ゼミ生諸君の、真摯な問題提起と討論の姿勢・論点に私自身も学ぶこと大でした。
後期は、前期の成果に基づいて優生思想の歴史的根源と戦時下にあって「人間はどう生きるべきか」を追求した吉野源三郎『君たちはどう生きるか』を今年も読み、人間観を深めていきたいと考えています。

つれづれなるままに
 今日は、つれづれなるままに、力を抜いて書いてみた。
 若い頃は、毎月初めの日曜日に、僅かな小遣いを懐に抱いて、神田周辺の本屋街に出かけ、午前中に新刊書を買い、気に入った店でお昼を食べ、午後には古本屋をまわって時間を過ごし、喫茶店で時間を過ごすことを楽しみにしていた。
 最近は、専らアマゾンでの購入である。出かけずに、ほしい本を探さずに、ピンポイントで効率良く必要な本だけを限定して購入している。その結果気がついてみると「面白そうな本を手にとってみる」体験がなくなった。
 もう一つ気になるのは、大変大げさだが貧富の格差拡大への自分自身の加担である。アマゾン会長のジェフ・ベゾス氏は2018~2020年3年連続で世界一の大富豪であった。資産はなんと14兆円!全く想像できない金額ではないか。時給に換算すると4億円!日本人の生涯賃金が平均3億円というからベゾス氏は私たちが一生かかっても稼げない賃金を一時間で稼いでいることになる。
 そのお金はどれほどの額か。
 世界人口の下半分、35億人が所持しているお金と上位62人が所有する資産が等しい。
 ベゾス氏の資産に1%の税金をかけるだけで、エチオピアの医療費は総て賄えるという。
 世界の大富豪上位22人の資産の合計は、アフリカ全女性の資産よりも多いらしい。
 上位1%の大富豪に0.5%の税金をかけるだけで2億6千万人の子どもが学校に行くことができ、300万人を飢えから救済できるそうだ(国際NGOオックスファム報告書)。
 「格差の是正」というと「自分にはできそうもない」課題だと思える。でも、アマゾンではなく、本屋街を歩くことで中小の書店は少しでも活気づくかもしれない。
 コロナ禍の中、生活が大変な人々が増えている世界だ。
 自分のゆとりを取り戻すような、ゆとりと時間を楽しむ生き方も考えるべきなのかもしれない。そんなことを思う今日この頃である。